▼システム屋として

2004年10月26日

システム屋としてのプライド

先日、「ぐるぐるまわる」の記事でも書かせていただいたが、前述の私の経験のように、中間業者が満足な面接もせずに、その役目を引き合いをいただいた会社に委ねてしまう。

そのような無責任な例はあまり多くはないのかも知れない。ただ、面接するにしても、私の経験上、せいぜい1時間前後で是非を判定してしまう。それで何を見極めると言うのだ。

社員の採用であれば1次試験、2次試験−と、1回で決める事をしないやり方をとる会社は多いだろう。また、採用したからといって、すぐに仕事の第一線を任せるような事は大抵しない。

この会社、この仕事がどのような生業か、必要な知識・技術は何か。そういう部分をクリアしてから本格的な仕事のデビューをしていただくのが一般的だ。

だが、協力会社面接は1時間前後。そして合意すればいきなり第一線に送り込まれる。これは言わば賭けの世界だ。

ここにもう一つの例がある。私自身の経験ではないが、私の知っているある会社が現実に行っていた事だ。

・・・・・

ある大手ソフトハウスより、SE10名の体制を作って欲しい−とのオファーを受けた。

自社の技術者が居ないので、早速、協力会社に技術者提案依頼の絨毯爆撃。1社ならともかく声をかけているのが3、4社を超えると、もう面接に力を入れようが無い。質はともかく、10名集めることが仕事なのだ。

とにかく10名。

だが、なかなか集めることが出来ない。

そんな状況で望んだある面接。

ここで良い人に出会えればなんとか先方に提案出来る。
ところが、面接対象の技術者は一目で「これは...」と思わせる方であった。

面接する側をご経験された方であればおわかりだと思うが、出来る人を見極めるのは大変難しいが、ダメな人を見極めるのは比較的簡単だ。稀に、しばらく時間が経ってから「思ったよりやるなぁ...」と思わせる方もいらっしゃる。だが、確率は極めて低い。

さて、一目で明らかに「ダメだこりゃ。」と思ったが、10名集める事が優先した。

これで数が揃い、先方に提案・合意を得て、仕事が始まった。だが、仕事と集まった要員の質的バランスがあまりに悪い。どう見てもクレームが入る筈だ。

その事を営業の方に追求すると、「わかってる。ダメならまた代わりを探せば良い。」と。

どうだろうか、このスタンス。

前にも触れたが、この手の商売を主流にしている会社の営業の方は、「困った時の人助け」を使命に、構築した人的ネットワークをフル活用し、依頼された人探しを行う。時には無理を聞いてくれて感動したり、「裏切られた、筋が通らない」などと、喜怒哀楽のある仕事に満足している方も多い事だろう。

しかし、ソフトウェア受託開発会社として、

貴方の会社のサービスって何ですか?
それでシステム・ソフトウェアの品質は保たれるのですか?
その仕事を通じて、お客様に何を喜んでいただければ良いのでしょう。

などと言いたくなる。まぁ「雇用の創出」にはなってるかもしれない。が、長期的な観点で見たらどうだか...。

・・・・・

確かに仕事の引き合いは多いに越した事はない。当たり前だ。ただ、もし社員でこなせぬオファーが発生し、別の会社にお願いするにしても、自分の会社の社員を採用するが如く真剣に、時間をかけて、その方の人となりを見極めたいものだ。

それが、自社のサービスとして、品質・品格をキープ出来る−という確信が欲しい。それが出来なければ、他の会社に仕事をお願いするのは、ソフトウェア受託開発会社としてのプライドを賭けて控えるべきだと私個人としては思う。

シグマクレスト
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2004年10月21日

ぐるぐるまわる!?

以前、「ソフトウェア受託開発業」を名乗っていてもその実、色々なパターンがあるという記事を書きました。

今回は、そのうち、「技術者送り込み型」についての笑えない話について書き込ませていただきます。

参照 ソフトウェア受託開発業?

この形態を主流としているのは、前職でかなり上位の管理職か営業の方が独立された中小ソフトウェア会社に多いようです。

つまり、これまでの付き合いから、見込み客・商談先を既に多く抱えている方々が中心となっている会社です。

しかし、背負う看板が小さくなったので、初めから新規のお客様から仕事を直にいただくのはかなり困難です。

ですので、仕事の掘り出し先を、大手のソフトハウスや、これまでは下請で使っていた会社に多く求めたりします。

これならば、これまでの人脈をフル活用して、かなりの案件を確保出来ます。単価は安くなりますが...

・・・・・

さて、仕事はいただいた。しかし、誰がやるの?

小さい会社なので、技術者の新規採用もままなりません。

共に会社を創った、または共鳴して入社してきた技術者はいるにはいますが、全く足りません。

そこで、またまた人脈を頼ります。

今までの関係から、嫌とはいえない会社がいくつも出てきます。こうなると仕事が回転し、動き始めます。

古くは、銀行のオンラインプロジェクトや損保・金融など、ビッグプロジェクトが発生する度、全体では何百人・何千人の技術者が必要でしたので、受注したメーカから回りまわって、小さなソフトハウスでも、おこぼれで10人・20人などというオファーがあった筈です。

今もその仕事のやり方が変わっていない会社も多い事でしょう。

ただ、このような会社が増えてくるとどういう事が発生するでしょうか。

想像つきますよね。
笑えない話です。

ある中小ソフトA社はSE5名欲しい−というオファーを大手ソフト会社から受けました。

自分の会社には要員がいないので、すぐにその話を単価を下げてB社とC社に依頼。

さらにB社、C社も同様に協力会社に声をかけ....

そしてついにある会社からA社にそのオファーが来てしまいました。

そうです。ぐるっと一回りして自分に返ってきちゃったのです。

先日、お付き合いはないものの、普段、案件情報をいただいている大手の方が、これと同じ経験をされたらしく、嘆いていらっしゃいました。

また、似てる話としては「技術者経歴書」(スキルシート)もぐるぐる回ります。

これは案件情報とは逆で、「この技術者がお役に立てる仕事はないでしょうか?」という営業の提案用ツールとなっております。

それを受けた会社は、書類の社名のみ自社名で上書きし、それをもってまた次の営業に走る。そして次の会社も。

次も...そうしているうちにスキルシートが最初の会社に戻ってきてしまった。

これも昔実際に見たことがあります。

営業の方にとっては、「技術者が足りない。誰か助けて!!」というお願いに応えることで、お役立ちの感覚を持たれるようです。

私も、全てを否定はしません。ただ、問題は感じます。

これを読まれたみなさんは、どうお感じになりますか?

(続く)

シグマクレスト
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2004年10月19日

ソフトウェア受託開発業?

「ソフトウェア受託開発業」を名乗る中小企業は山程ある。しかしながら、その実情はいくつかのパターンにはっきりと分かれる。

1.純粋型

お客様から開発テーマでオーダーをいただき、見積もりを提出させていただく。その後のキャッチボールを経てご発注いただけたなら、体制を整え、高品質で期日迄に納品すべく全力を尽くす。

システム化テーマが発注単位となる。
フェーズは要件定義から本番稼動、維持迄、問わない。

2.上流工程特化型

ご発注いただく迄の過程は、「純粋型」と変わらない。但し、なるべくお客様との距離の近い仕事に重点を置く為、製造フェーズ(一部設計も)のみ外注する。そして下請け会社から納品されたものを自社で検収し、本番導入に向けて再びお客様とやりとりを行う。

システム化テーマが発注単位となる。
フェーズは要件定義・基本設計などの上流工程。
但し、これはある程度長くお付き合いいただいている大口固定のお客様がいないと難しい。

3.技術者送り込み型

オーダーは「××が出来るSE(プログラマ)X人」という形。見積りも大雑把に言うと人数×期間となる。私の経験では、大手ソフトウェアベンダーからの発注にこの形が多い。

発注単位は人。
フェーズはお客様のオーダーにより千差万別。

・・・・・・

「上流工程特化型」はある意味「純粋型」の成長した結果である。が、「技術者送り込み型」は、商売が全く異なるように思う。その違いはまた別の記事に記そうと思う。

・・・・・・

ウチの会社は、ほぼ「純粋型」である。そして、それを変えるつもりはない。
その理由は、

・システムを作り上げ、お客様に使っていただき、喜んでいただく姿を自分たちの眼で直に見たい。

・品質と納期を守るべく、社員・会社が一丸となって働く事を通じて、さらなるチームワーク向上と良き社風醸成をする

・「物を作る」ことにこだわりたい。

である。

商売で考えると、どのような方針を会社の生業とするのか、その選択肢は多い。
ただ、私は、上の気持ちを大切にし、なおかつ、多くのお客様に出会い、喜んでいただく為の努力をするつもりだ。

土の香りのシステム作りを目指します。
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2004年10月16日

ソフト業界の下請構造(2)

ある日の面接風景...

たまたまお客様先で知り合った同業他社の社長より仕事のオファーがあった。

宅配業者の仕事で設計が出来るSEが欲しいとの事。話を聞く限りでは、その会社がお客様からの一次請け業者だ。

必要スキルは、IBMの汎用機の経験があり、CICSとCOBOLが判ること。

ウチの会社では、その時点で条件を満たす社員が居なかった為、協力会社に声を掛ける旨、オファー元会社に了解を取り、普段より付き合いのある協力会社の営業の方に、条件に見合う技術者が出て来ないか依頼をした。

数時間の後、折り返しの連絡があり、「一人いる。75万でどうでしょう。」とのこと。こちらが受けた話がやはり75万であったので、これでは話にならない。

「73万にならないか」とお願いし、なんとか了解を得た。
オファー元会社には、75万ではなく、せめて78万でお願いしてみようと考えていた。
成立すれば月々黙っていても5万の利益となる。

オファー元に早速連絡を入れた。
まずは単価交渉の話は置いておき、面接の日時だけを決め、私がその技術者を連れて行く旨、約束した。

そして、当日その時間。

お願いした協力会社を信用して、ウチの会社での面接をは飛ばして初めてお会いする技術者の方を直接連れて行くつもりであった。
急がれていたとは言え、これは明らかに手抜き。

約束の駅改札出たところでしばらく待った。
すると協力会社の営業の方が一人で来られた。

「いやぁ、僕もその方と今日初めて会うもんですから...」

ちょっとびっくりしたが、人の事は言えない。
自分も楽をして月々5万の中抜きを狙っている。

「ちょっとここでお待ちください。」
営業の方はそう言うと、すぐ傍にいる3人組の所へ歩み寄っていった。一人は社長風貌、一人は営業風の軽い感じ。そしてもう一人が失礼だがやや冴えない風貌の方。

1分もかからなかったか。営業の方がそのうちの一人を連れて(3番目の方)、こちらに戻ってらした。残ったお二方はしばらくこちらを眺めていたが、駅の人込みへ消えていった。

この技術者はいったいどこの誰なんだ...

「...きっとこの方はそれ程仕事の出来る方ではない。」 心の中ではやや葛藤があった。が、今はそんな事を言っている場合ではない。月々5万の利益が大事だ。

「××さんです。」 営業の方の紹介で、その技術者の方はペコリ。

「よろしくお願いします。」
「わかりました。」
協力会社の営業の方はここで退場。
私の目の前に今初めて会ったどこの何者かわからない技術者が一人。

オファー元の会社に向う足で、少しは彼の事を知らないといけないと思い、色々な質問を重ねたが、どうもおとなしい。話が全くはずまない。

心の葛藤がますます膨らみつつ、いざ面接の場へ。
通り一遍の紹介をすませ、質問攻めが始まった。
CICSの経験が条件であったので、当然それに絡んだ質問がきた。
ところが、あろうことか、それに対する答えは全く的外れ。CICSと言えばIBMのオンライン業務のインフラの一つであるが、全く違う事を応えている。確かに経歴書上では経験しているのに...

明らかに経歴詐称だ。
しかし、この程度の事、この業界ではたまにある。
むしろ、仮に面接でそれを見破れなかったとしたら、面接した方にリスクが積まれる。おかしな話だ。

流石にこの面接は簡単だった。相手も馬鹿ではない。この商談は破談した。

・・・・・・

このような事は普段から大手・中小を問わず、そこら中で行われている事だ。特に中小ソフトの営業の役目は、どれだけ帳合先に人を送り込むかが腕の見せ所。
完全に質より量の世界だ。

・・・・・・

これは、やや脚色はしたが、ウチの会社がまだ創業間もない頃の実話。

この商売は自分には向かない事が身に染みた。
また、この商売をこの会社の生業にしてはいけない。
明らかに理念とは逆の方向だ。

この件が破談になって本当に良かったと思っている。
成功していたら、味をしめて、取り返しのつかない程蝕まれていたかもしれない。

この日以来、人材調達の中間搾取型の商売は一切行っていない。

土の香りのサービスを提供いたします。
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2004年10月13日

ソフト業界の下請構造(1)

お客様 →@150万→ ハード(ソフト)メーカー 

    →@100万→ 大ソフトベンダー

    →@ 80万→ 中規模ソフトハウス

    →@ 70万→ 小規模ソフトハウス

    →@ 60万→ 零細ソフトハウス又は個人事業主

これ、なんだか判りますか?

システム構築にあたってのSE作業の委託/受託の関係の1例です。(あくまで例ですので、単価等は当然それぞれ現実は異なります)

10年以上昔に比べれば、契約ルートの透明性をお客様も求められるケースが増えてきましたが、この下請構造、脈々と生きています。
もちろん、こうではない例もあるでしょうが、逆にこれ以上の階層構造になる事もしばしばあります。

このようになった背景・原因はまずは置いておきましょう。
問題は、
お客様が150万で依頼した作業が、60万(以下)で受託した所属のSEによって行われるという事です。

・・・・果たして品質は大丈夫でしょうか。

私が見てきたところによると、一部の例外を除いて、基本的に、60万で雇われたSEは60万の仕事をします。「損して得とれ」とサービス度合を向上したところでタカがしれてます。

別の観点からみれば、下請構造が重なればこうなるのは当たり前です。建築・土木の業界等でも下請構造は有名です。

しかし、規格やマニュアル類の整備状況がまるで違います。

他の業界でも原材料の質・規格・工法など、もちろん変化し成長してきていることでしょう。が、この業界の変化の仕方はハンパではないんです。色々な規格や標準化が登場する頃には既に次世代の開発技法・考え方・ツール・ワークベンチなどが登場してくるのです。

そんな中ですので、品質を守るのは、未だSE等技術者の腕一本に頼る部分が多いのです。

その状況の中、

・・・・果たして品質は大丈夫でしょうか。

私はやはり、この状況は何か間違っていると思うのです。

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