2004年10月16日

ソフト業界の下請構造(2)

ある日の面接風景...

たまたまお客様先で知り合った同業他社の社長より仕事のオファーがあった。

宅配業者の仕事で設計が出来るSEが欲しいとの事。話を聞く限りでは、その会社がお客様からの一次請け業者だ。

必要スキルは、IBMの汎用機の経験があり、CICSとCOBOLが判ること。

ウチの会社では、その時点で条件を満たす社員が居なかった為、協力会社に声を掛ける旨、オファー元会社に了解を取り、普段より付き合いのある協力会社の営業の方に、条件に見合う技術者が出て来ないか依頼をした。

数時間の後、折り返しの連絡があり、「一人いる。75万でどうでしょう。」とのこと。こちらが受けた話がやはり75万であったので、これでは話にならない。

「73万にならないか」とお願いし、なんとか了解を得た。
オファー元会社には、75万ではなく、せめて78万でお願いしてみようと考えていた。
成立すれば月々黙っていても5万の利益となる。

オファー元に早速連絡を入れた。
まずは単価交渉の話は置いておき、面接の日時だけを決め、私がその技術者を連れて行く旨、約束した。

そして、当日その時間。

お願いした協力会社を信用して、ウチの会社での面接をは飛ばして初めてお会いする技術者の方を直接連れて行くつもりであった。
急がれていたとは言え、これは明らかに手抜き。

約束の駅改札出たところでしばらく待った。
すると協力会社の営業の方が一人で来られた。

「いやぁ、僕もその方と今日初めて会うもんですから...」

ちょっとびっくりしたが、人の事は言えない。
自分も楽をして月々5万の中抜きを狙っている。

「ちょっとここでお待ちください。」
営業の方はそう言うと、すぐ傍にいる3人組の所へ歩み寄っていった。一人は社長風貌、一人は営業風の軽い感じ。そしてもう一人が失礼だがやや冴えない風貌の方。

1分もかからなかったか。営業の方がそのうちの一人を連れて(3番目の方)、こちらに戻ってらした。残ったお二方はしばらくこちらを眺めていたが、駅の人込みへ消えていった。

この技術者はいったいどこの誰なんだ...

「...きっとこの方はそれ程仕事の出来る方ではない。」 心の中ではやや葛藤があった。が、今はそんな事を言っている場合ではない。月々5万の利益が大事だ。

「××さんです。」 営業の方の紹介で、その技術者の方はペコリ。

「よろしくお願いします。」
「わかりました。」
協力会社の営業の方はここで退場。
私の目の前に今初めて会ったどこの何者かわからない技術者が一人。

オファー元の会社に向う足で、少しは彼の事を知らないといけないと思い、色々な質問を重ねたが、どうもおとなしい。話が全くはずまない。

心の葛藤がますます膨らみつつ、いざ面接の場へ。
通り一遍の紹介をすませ、質問攻めが始まった。
CICSの経験が条件であったので、当然それに絡んだ質問がきた。
ところが、あろうことか、それに対する答えは全く的外れ。CICSと言えばIBMのオンライン業務のインフラの一つであるが、全く違う事を応えている。確かに経歴書上では経験しているのに...

明らかに経歴詐称だ。
しかし、この程度の事、この業界ではたまにある。
むしろ、仮に面接でそれを見破れなかったとしたら、面接した方にリスクが積まれる。おかしな話だ。

流石にこの面接は簡単だった。相手も馬鹿ではない。この商談は破談した。

・・・・・・

このような事は普段から大手・中小を問わず、そこら中で行われている事だ。特に中小ソフトの営業の役目は、どれだけ帳合先に人を送り込むかが腕の見せ所。
完全に質より量の世界だ。

・・・・・・

これは、やや脚色はしたが、ウチの会社がまだ創業間もない頃の実話。

この商売は自分には向かない事が身に染みた。
また、この商売をこの会社の生業にしてはいけない。
明らかに理念とは逆の方向だ。

この件が破談になって本当に良かったと思っている。
成功していたら、味をしめて、取り返しのつかない程蝕まれていたかもしれない。

この日以来、人材調達の中間搾取型の商売は一切行っていない。

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この記事へのコメント

1. Posted by ika_suke   2004年10月18日 00:11
はじめまして。
先日は貴重なコメントをありがとうございました。
SEという仕事はどうしてもイメージが先行しがちで、
本当のところがつかみづらい職種なので、
まずは業界のことから少しずつ理解していこうと思います。

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